ニュース 総合TOP ニュース コラム 電気料金高騰から見る電力市場の変化 2022.04.04 電気料金高騰から見る電力市場の変化 4月から新年度に変わり、前年度を振り返ると2021年度は非常に波乱万丈な1年だった。 コロナ過、LNG価格高騰、ウクライナ侵攻、福島県沖地震、円安、 全てが起因となる日本の生活を脅かす問題として一番インパクトが高いのは、やはりエネルギー価格高騰なのではないだろうか? 2021年度のJEPX電力卸市場(東京エリア)の年間約定価格を見ると昨年10月から市場高騰に推移している。 LNG価格高騰に関しては、電気の仕組み 電気料金高騰はなぜ起こったか?でお伝えした通りだが、他にも例年にはない市場の変化が表れている。市場の変化には、外部的要因からなる突発的変化と数年間から顕著に表れる変化の2種類ある。 例年通りの高騰であれば、寒さが落ち着く2月以降は高騰が落ち着くはずだが、今回の突発的変化のトリガーとなったのは、現在も進行中のウクライナ侵攻と3月16日(水)の福島県沖地震が記憶に新しい。 ロシア経済制裁の影響で石油、LNG価格は更に高騰している。 そこで追い打ちをかけたのが福島県沖震災による火力発電所の損壊だ。 火力発電所の停止により東京電力エリアの供給量が一時的に減る中、連休明け3月22日(火)からは気温低下による電力需要が増えたため、ギリギリ停電の可能性があった、需要割合107%の深刻な需給逼迫警報が発令され、需要家に対しても節電要請があった。 深刻な電力逼迫が起こり3月23日(水)は市場価格が最高値80円/kwhが連続する非常に珍しい状況が起こった。 発電設備を所有しない新電力会社の中には、倒産、事業撤退、新規受付停止を余儀なくされる企業も少なくない。 しかし、発電設備を所有する新電力会社の中には、前々年度250円/kwhの前代未聞の高騰価格の損失を取り返すべく、市場へ80円/kwhで売電した新電力会社もあったかもしれない。 3月27日(日)は火力も復旧して、全国的に晴天に恵まれ、太陽光発電の発電量が多かったが、土日は需要が少ないため、日中は電力が余り0.01円/kwhが連続した。しかし、夕方以降はまだ20円/kwhの高騰を推移している。 3月28日(月)も引き続き全国的に晴天に恵まれ、平日の電力需要に対して日中の太陽光発電量が市場価格の価格低減に大きく貢献している。 数年前から顕著に表れている、もう1種類の市場変化が、変動型再生可能エネルギーである太陽光・風力発電の増加である。 今までの電源構成では、ベースロード電源である原子力が24時間稼働し、調整電源である火力発電が昼間の変動する電力消費を賄ってきたため、日中の市場価格が高く、需要が少ない深夜電力は安くなる傾向にあった。 しかし昨今では、過去に世間を騒がせた原子力の割合が減り、50ヘルツエリア(北海道・東北・東京)では稼働している原発は1基も無い。 その代替えとして、変動型再生可能エネルギーである太陽光発電の割合が増加しており、悪天候と夕方から明け方にかけて調整電源である火力発電がフル稼働してる。そして、火力燃料はCO2排出量が少ない高コストなLNGに変わっている事も高騰原因の一つだ。 電源構成の構造変化により、特に晴天日の日中は市場価格が安く、悪天候と気温低下が市場高騰に大きく影響してる。 もはや以前のように日中が高く深夜が安い市場局面は少ないのかもしれない。 そして、家庭用のオール電化プランも深夜電力値上げの価格見直しとなる。 電力卸市場価格の乱高下は、蓄電池普及とEVシフト加速による変動型再エネの平準化が進むまで、しばらく続くだろう。 出典:JEPXスポット市場 価格推移 ENECHANGE INSIGHT MARKETS 一覧に戻る