ニュース 総合TOP ニュース コラム 電気の仕組み 電気料金高騰はなぜ起こったか? 2022.01.10 電気の仕組み 電気料金高騰はなぜ起こったか? 電気代高騰の要因には、数年に一度の大寒波もあるが、燃料費高騰の影響が一番大きい。 世界的カーボンニュートラルの潮流から再エネ主力電源化が加速していく中、 今シーズン、ヨーロッパでは風況が悪く風力発電の発電量が例年の3割減、ブラジルでは100年ぶりの渇水が電源構成65%以上を占める水力発電にも大きな影響を与える想定外な事態が起こっている。 再エネは不安定なのだ。 そしてコロナ過による産業の停滞からのリベンジ消費と世界的大寒波により電力需要も急激に増えている。 そんな時に一番頼りになるのは調整電源である火力発電所だが、カーボンニュートラルの観点からも火力発電燃料で最もCO2排出量が少ないLNGが世界的に需要が集中している。 だからLNG調達価格も暗号資産並みに激しい値動きを推移している。 更に日本の電源構成では35%もLNG火力が占めておりLNG価格高騰が電気料金高騰にも大きく影響している。 ここで過去3年間のJEPX(日本卸電力取引所)の約定価格をご覧いただきたい。 2019年度の電力卸価格高騰は4月中旬の想定外の冷え込みと8月上旬の猛暑の年2回の電力逼迫のみ。通年平均卸価格は9.12円/kwhだった。 8月は晴天による猛暑で卸価格高騰が発生するため太陽光発電が活躍している。 今後の普及状況によっては真夏の電力逼迫のリスクヘッジとして益々、太陽光発電が重要な役割を担うだろう。 しかし冬の電力卸価格高騰には気温が低い早朝と夕方からの時間帯が多く、悪天候による気温低下が起因するため、今のところ蓄電池がない限り、太陽光発電は全く役に立たない。 その代わり、真冬は風況が良いため洋上風力発電の今後の普及にも期待したい。 2020年度の電力卸価格高騰で注目するべき点は1月中旬の最高卸価格250円/kwhだ。それでもJEPXオークションで電力調達できなかった新電力会社は500円/kwh以上のインバランス料金を支払うことになり、これまで全量をJPEXで仕入れをしていた新電力数社は倒産を余儀なくされた。250円あるいは500円以上の費用をかけて仕入れを行い、高圧単価15円前後で販売していたら大赤字だ。新春一番マグロの初競りとは訳が違う。コロナ過の中、電力消費が停滞していたが、寒波により急激に電力需要が高まり、LNG在庫がなく電力供給が追いつかなかった事が原因だ。通常LNGは液化を保つために-162℃で貯蔵する必要がある。貯蔵にもコストがかかるのだ。だから長期保存に向いていない。コロナ過で電力需要が停滞していたから日本はLNGを在庫していなかった。更に昨年はパナマ運河の大渋滞によりLNGタンカーの到着が大幅に遅れた事も原因の1つだ。しかし、それでも上半期の平均卸価格は6.12円/kwhだったため、通年の平均卸価格は12.03円/kwhに落ち着いた。 前年度、過去最大の電力卸価格高騰の教訓から卸市場価格80円/kwhとインバランス料金200円/kwhの上限が設定された事により、今年の冬もLNG価格の高騰により電力は逼迫しているが、今期は残り3か月、4月~12月までの平均卸価格は10.38円を推移している。2021年度の東京電力エリア上半期は、電力需要が一番少なく太陽光の発電量が一番多い5月GW前後には電力が余り、約定価格0.01円/kwhが2日ほど発生した。太陽光発電の普及率が高い九州電力エリアの場合は春秋0.01円/kwhが頻発する事態が起こっている。 偏った変動型再生可能エネルギーである太陽光と風力発電と蓄電池を組合わせて発電量の平準化する事が出来れば、CO2排出量を減らしながら安価な電力の安定供給が可能になる。 そして資源が少ない日本では、徐々に火力発電の割合を減らしながら 枯渇燃料の依存度も減らしてエネルギー自給率を上げる事も重要だ。クリーンエネルギーの地産地消こそが今後の日本にとって大きな課題にもなるだろう。 一覧に戻る